求人を出す前に、まず「その人しか知らない仕事」をなくす
「事務員が辞めることになりました」
建設会社にとって、この一言の影響は小さくありません。
請求書。
安全書類。
グリーンサイト。
見積書。
勤怠。
協力会社との連絡。
各種データ入力。
書類整理。
電話。
メール。
会社によって担当範囲は違いますが、事務員が辞めても、これらの仕事は翌日からなくなるわけではありません。
そこで、
「とにかく次の事務員を採用しよう」
となります。
もちろん採用は必要かもしれません。
ただ、企業のバックオフィスを支援している未来来来株式会社では、その前にやることがあると考えています。
それは、
辞める人が何をやっていたのか、全部出すことです。
本当に困るのは「一人減ること」だけではない
事務員が辞めると、
「一人分の労働力がなくなる」
と考えます。
でも実際には、それだけではありません。
例えば、
「あの請求書、どうやって作っていた?」
「この元請の安全書類、どこにある?」
「グリーンサイトのこの操作、誰が分かる?」
「このExcelは何のためのファイル?」
「毎月この会社へ何を送っていた?」
「このパスワードは?」
といったことが起こる可能性があります。
ここで初めて、
会社の仕事ではなく、“その人の仕事”になっていた
ことに気付きます。
つまり退職によって表面化する問題の一つは、
人手不足だけではなく、
属人化です。
まず求人票を書くのではなく「仕事の棚卸し」をする
事務員が辞める。
↓
求人サイトへ掲載する。
↓
「建設会社の一般事務募集」
この順番にしてしまうと、
前任者がやっていた仕事を、そのまま次の人へ渡すことになります。
未来来来株式会社なら、その間に一つ工程を入れます。
業務の棚卸しです。
例えば、
毎日やる仕事。
毎週やる仕事。
毎月やる仕事。
現場が始まると発生する仕事。
現場が終わると発生する仕事。
請求時に発生する仕事。
入退社時に発生する仕事。
年度ごとに発生する仕事。
このように洗い出します。
「事務」という大きな箱のまま考えないことが重要です。
最初に確認するのは「止まったら困る仕事」
退職が決まったとき、すべての業務を同じ優先順位で引き継ぐ必要はありません。
まず、
止まると会社や現場に影響する仕事
から確認します。
例えば、
支払いや請求に関係する業務。
期限が決まっている提出物。
現場入場等に関係する手続き。
取引先・協力会社との定期的な連絡。
給与・勤怠等に関係する業務。
各種アカウント・システム。
などです。
ただし、実際の重要度は会社ごとに違います。
だから、
「建設会社ならこの順番」
と決めつけるのではなく、
止まった場合に何が起きるのか
で優先順位を付けます。
引継書より先に「カレンダー」を作る
BPOの視点から見ると、退職時にかなり重要なのが、
いつ、その仕事が発生するのか
です。
業務一覧だけ作っても、
実際にいつ処理すればいいのか分からなければ運用できません。
例えば、
毎月5日まで。
毎月20日前後。
月末。
現場開始前。
入場前。
請求締め日。
給与締め日。
年度更新。
資格等の期限。
といった時間軸があります。
だから、
「何をしているか」
だけではなく、
「いつ発生するか」
まで残します。
これだけでも、次の担当者がかなり仕事を理解しやすくなります。
「どうやるか」より「何を見て判断しているか」を聞く
引継ぎというと、
パソコン画面を開いて、
「ここを押して、ここへ入力して……」
となりがちです。
もちろん操作方法も必要です。
ただ、未来来来株式会社が業務を引き継ぐときに重要だと考えているのは、
判断基準です。
例えば、
この場合は社長へ確認する。
この元請の場合はこの書式。
この情報が足りなければ現場監督へ聞く。
この会社から来たメールはこのフォルダ。
このケースだけ処理方法が違う。
こうしたものです。
画面操作だけ録画しても、
例外が発生した瞬間に仕事が止まります。
だから、
「どう操作するか」と「どう判断するか」は分けて残す。
これが重要です。
退職する人の頭の中にある「例外」を聞く
マニュアル化しにくいのは、通常業務より例外です。
「普通はこうだけど、この会社だけ違う」
「この現場の場合だけここへ送る」
「この人には先に電話した方が早い」
「この書類は毎回ここで差し戻される」
こうした情報です。
長く担当している人ほど、
本人にとっては当たり前になっています。
そのため、
「何か引き継ぐことありますか?」
と聞いても出てこないことがあります。
そこで、
過去に困ったケース
いつも間違えやすいケース
担当者が変わったら困りそうなこと
を聞き出します。
これは単なる操作マニュアルより価値があります。
ID・パスワードだけ引き継げばいいわけではない
現在の建設事務では、さまざまなクラウドサービスやシステムを利用する会社があります。
グリーンサイトなどもその一つです。
ここで注意したいのが、
退職者個人のIDやパスワードを、そのまま次の担当者へ渡す、
という発想です。
サービスによってアカウント管理や利用条件は異なります。
会社として、
誰が管理者なのか。
誰にどの権限があるのか。
登録されているメールアドレスは何か。
退職者のアカウントをどう処理するのか。
を確認する必要があります。
パスワードをExcelに書いて共有するだけではなく、
会社としてアカウントを管理できる状態に戻す
ことが重要です。
一番やってはいけないのは、現場監督が全部引き取ること
事務員が辞めた。
新しい人はまだいない。
すると、
「しばらく現場でやろう」
となることがあります。
安全書類。
写真整理。
データ入力。
グリーンサイト。
メール。
資料作成。
これらが現場監督へ戻る。
しかし以前の記事でも触れた通り、国土交通省自身が建設現場の働き方改革として、工事書類の削減・簡素化や生産性向上を進めています。
事務員の退職によって、
現場監督を事務員へ戻してしまう
のは避けたいところです。
社長が全部引き取るのも同じ
中小企業では、
「分からないから、とりあえず社長へ」
となることがあります。
請求書も社長。
メールも社長。
書類も社長。
取引先からの問い合わせも社長。
こうすると会社は一応動きます。
でも、
会社を動かすために、社長が会社の事務処理をする
状態になります。
未来来来株式会社がBPOを提供する中で大切にしているのは、
「誰かがやれば仕事は終わる」
だけではなく、
誰がやるべき仕事なのか
まで考えることです。
前任者の仕事を、そのまま次の一人へ渡さない
ここで一度、辞めた事務員の業務を分解します。
例えば、
①社内に残す仕事
経営判断。
会社としての承認。
機密性が高く社内管理すべき業務。
現場や取引先との関係上、社内担当者が行うべき仕事。
②専門的な判断が必要な仕事
施工上の判断。
安全上の判断。
法令上、特定の立場・資格等が担うべき業務。
これらを単純な事務作業として外部へ出すことは考えません。
③BPOへ切り出せる可能性がある仕事
決められたルールで行う入力。
データ整理。
書類作成補助。
情報収集。
定型メール。
資料整理。
請求書作成補助。
グリーンサイト等への定型入力。
安全書類に関するバックオフィス業務。
などです。
④AI・システムで減らせる仕事
文章のたたき台。
データ分類。
文字起こし。
定型的な情報整理。
システム間の転記など。
ただし、機密情報・個人情報の取り扱いや、最終確認の方法は決める必要があります。
⑤やめられる仕事
これが意外に重要です。
「前からやっているから」
という理由だけで続いている仕事。
誰も見ていない資料。
同じ情報の二重入力。
別のシステムで確認できるのに作っている一覧。
退職は大変な出来事ですが、
会社の仕事を一度ゼロから見直す機会
でもあります。
「事務員一人分」をそのまま募集しない
ここまで整理した結果、
やはり事務員が一人必要。
それなら採用すればいいと思います。
でも、
例えば前任者の仕事のうち、
一部をなくせた。
一部をシステム化できた。
一部をBPOへ出せた。
となれば、
次に採用する人へ求める仕事内容が変わります。
何でもできる人。
建設事務経験者。
Excelができる人。
ではなく、
社内に残った仕事に必要な人
を採用できます。
退職は「属人化を発見する検査」でもある
事務員の退職そのものは、会社にとって困る出来事です。
ただ、
その人が辞めた瞬間、
「あれはどうやるんだ?」
が大量に出てきたなら、
退職によって問題が生まれたというより、
もともと会社の中にあった属人化が見えた
とも考えられます。
だから次の担当者へ仕事を渡すときは、
同じ状態へ戻さない。
マニュアルを作れば属人化がなくなるわけではない
ここも注意が必要です。
大量のマニュアルを作ったから、
属人化解消。
ではありません。
誰も更新しなければ、
半年後には古くなります。
だから未来来来株式会社では、
マニュアルを完成品として考えるより、
仕事をするたびに更新される運用情報
として考える方が現実的だと思っています。
例えば、
新しい例外が出た。
→ルールへ追加。
差し戻された。
→チェック項目へ追加。
元請のルールが変わった。
→手順を更新。
新しいシステムになった。
→画面・手順を更新。
こうして、
仕事をすること自体が、会社の業務情報を蓄積すること
になる状態を目指します。
外部へ出す場合も「外注先の属人化」に注意する
BPOへ出せばすべて解決するわけでもありません。
外注先のAさんしか分からない。
Aさんが休むと止まる。
Aさんが辞めると最初から説明。
これでは、
社内の属人化を社外へ移しただけです。
だから外注するときにも、
手順。
判断基準。
保存場所。
過去の対応。
質問履歴。
例外処理。
などを共有できる状態にする。
未来来来株式会社が考えるBPOは、
「一人の便利な外注スタッフを作ること」ではなく、「人が変わっても仕事が続く状態を作ること」
です。
事務員が退職すると分かったら、最初の一週間で確認したいこと
未来来来株式会社なら、まず以下を整理します。
何の仕事をしているか。
いつ発生するか。
締切はいつか。
止まると何が起きるか。
誰から情報を受け取っているか。
誰へ渡しているか。
どのシステムを使っているか。
どこにデータがあるか。
何を見て判断しているか。
例外は何か。
社内の誰が最終確認するか。
ここまで分かれば、
単なる「引継ぎ」ではなく、
業務そのものを再設計できます。
突然退職で引継ぎ期間がない場合はどうするか
もちろん、
十分な引継ぎ期間があるとは限りません。
突然来なくなった。
体調等の事情で引継ぎできない。
すでに退職している。
というケースもあり得ます。
その場合は、
完璧なマニュアルを作ろうとしない。
まず、
会社を止めないこと
を優先します。
メール。
共有フォルダ。
過去の請求書。
過去の安全書類。
システム履歴。
カレンダー。
取引先とのやり取り。
など、会社が適法にアクセスできる業務情報から、
何が定期的に行われていたのかを確認する。
そして、
緊急。
今月必要。
今後必要。
不明。
に分ける。
分からない仕事を全部一気に復元しようとしないことも重要です。
次の人を採用する前に「次の人が辞めても困らない会社」にする
事務員が辞めた。
だから次の事務員を採用する。
それだけなら、
数年後に同じことが起きる可能性があります。
せっかく仕事を見直すなら、
次は、
その人が辞めても会社に仕事が残る状態
を作る。
誰が担当しているかではなく、
会社として、
何を。
いつ。
どうやって。
誰が判断して。
どこまで処理するのか。
が分かる状態です。
人が辞めても、仕事まで会社から消えないようにする
未来来来株式会社がバックオフィス支援をしていて重要だと考えているのは、
仕事を人から会社へ戻すこと
です。
「あの人がやっている」
ではなく、
「会社ではこうやる」。
事務員の退職は、
採用の問題であると同時に、
業務設計の問題でもあります。
だから、
求人を出す。
その前に一度、
辞める人が持っていた仕事を全部並べてみる。
残す。
外へ出す。
自動化する。
やめる。
そして、
最後に残った仕事を見て、
本当にどんな人を採用すべきなのかを決める。
事務員が突然辞めたとき、
一番急いで探すべきなのは、
「次の人」ではなく、「消えそうになっている会社の仕事」
なのかもしれません。
未来来来株式会社の建設業BPOについて
未来来来株式会社では、退職した事務員一人分を、そのまま外部スタッフ一人へ置き換えることを目的にはしていません。
まず業務を棚卸しし、
今すぐ止められない仕事
社内に残す仕事
専門的な判断が必要な仕事
BPOへ切り出せる仕事
AI・システムで削減できる仕事
やめられる仕事
に整理します。
そのうえで、
「採用するのか」
「BPOするのか」
「両方使うのか」
を考えます。
事務員の退職が決まった段階でも、すでに退職してしまった段階でも、
まず何を止めてはいけないのかを整理するところからご相談いただけます。
監修:未来来来株式会社 Bpaas Bussen Ops事業部
最終更新:2026年10月7日



